- 腰痛の約4人に1人は仙腸関節障害
- 仙腸関節障害の原因
- 仙腸関節障害の症状
- 仙腸関節障害の検査・診断
- 仙腸関節障害の治療法
- 仙腸関節障害を放置するとどうなる?
- 仙腸関節障害の受診の目安
- 当院での仙腸関節障害の治療
腰痛の約4人に1人は仙腸関節障害

仙腸関節障害とは、背骨の一番下の「仙骨」と骨盤の「腸骨」をつなぐ“仙腸関節”に炎症や機能異常(緩み・固まり)が生じることで痛みをきたす疾患です。
仙腸関節は体幹と下肢の衝撃を吸収する重要な関節で、障害されると腰よりやや下の部分やお尻・鼠径部・太もも・ふくらはぎなど広い範囲に痛みが放散することがあります。
一般的な知名度は高くありませんが、腰痛の約25%に仙腸関節が関係するとされ、比較的よく見られる疾患です。腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と間違われやすいため、正確な診断が重要です。
仙腸関節障害の原因
外傷による損傷
交通事故、高所からの落下などによる急激な外傷により、仙腸関節に障害が生じることがあります。
妊娠出産
妊娠により、ホルモンの影響で仙腸関節が緩むことや、体重増加・姿勢変化による歩行バランスの偏りによって、仙腸関節障害を発症することがあります。
仙腸関節に負担のかかる運動や仕事
ラグビーやアメフトをはじめとするコンタクトスポーツ、重い物を持ち上げる・運ぶ仕事などによって仙腸関節に障害が生じることがあります。
細菌感染
ごく稀ですが、仙腸関節に細菌が感染して炎症を起こし、障害が生じることがあります。
その他疾患
変形性関節症
軟骨の擦り減りによる変形性関節症が仙腸関節で起こり、炎症や障害が生じることがあります。
脊柱側弯症
背骨の湾曲によって骨盤の片側に負荷が偏り、仙腸関節に障害が生じることがあります。
仙腸関節障害の症状

仙腸関節障害に特徴的な症状は次のとおりです。
- 腰というよりお尻の上下あたり(ベルトライン付近)の痛み
- 朝起き上がる時・立ち上がり・片脚立ちなど体重が片側にかかると痛い
- 長時間の立ち姿勢・座位で悪化
- 歩行時に骨盤が不安定な感覚がある
- 鼠径部・太もも・ふくらはぎへの放散痛
- 咳やくしゃみで痛みが響くことがある
椎間板ヘルニアと似た症状が出ることも多く、鑑別が必要です。
仙腸関節障害の検査・診断
仙腸関節障害の診断は、以下を組み合わせて行います。
- 問診(痛みの出る動作・妊娠歴・スポーツ歴など)
- 圧痛の有無(上後腸骨棘付近)
- 誘発テスト(Gaenslen test, FABER test など)
- レントゲン・MRIなどの画像検査(他疾患の除外目的)
- 仙腸関節ブロック注射で痛みが軽減するかを確認(診断的ブロック)
複数の誘発テストが陽性で、ブロックで痛みが改善する場合、仙腸関節障害と診断されやすくなります。
仙腸関節障害の治療法
装具療法
骨盤ベルト・ゴムベルト・コルセットを使用し、仙腸関節を安定させて痛みを軽減します。妊娠・出産後の方にも有効です。
運動療法(リハビリ)
- 仙腸関節に負担がかかりづらい姿勢づくり
- 体幹・股関節まわりの筋力強化
- 骨盤の歪みを整えるストレッチ
など
を段階的に行います。
近年は「Swing-石黒法」という、症状側を下にして横向きになり骨盤に軽負荷を加えながら股関節を伸ばす手技が注目されています。関節周囲の緊張緩和・アライメント改善が期待できます。
薬物療法・ブロック療法
以下の治療を組み合わせます。
- 消炎鎮痛剤(内服薬・湿布)
- 仙腸関節ブロック注射
→ 局所麻酔薬やステロイドを注入し、痛みの軽減を図る治療
→ 診断と治療を兼ねることができます - 筋緊張が強い場合は筋弛緩薬を併用することもあります
生活指導
仙腸関節障害は再発しやすいため、日常生活での予防が重要です。
- 片側に重心を乗せない(片脚立ち・あぐら・横座りを避ける)
- 長時間の立ち姿勢・座り姿勢はこまめに休憩
- 重い荷物を片側だけで持たない
- 股関節・体幹を柔らかく保つストレッチを続ける
仙腸関節障害を放置するとどうなる?
仙腸関節障害を放置すると…
- 痛みが慢性化し、日常生活に影響が出る
- 骨盤の動きが悪くなり、腰痛・股関節痛など他部位に負担が波及
- 立ち上がりや歩行動作が悪化し、姿勢不良を招く
慢性化すると治療期間が長くなるため、早期の受診が推奨されます。
仙腸関節障害の受診の目安
以下に当てはまる方は、診察をおすすめします。
- 腰よりもお尻の上あたりが痛む
- 片側の腰〜お尻にかけての痛みが続く
- 長く座る・立つと痛みが悪化する
- ぎっくり腰のような痛みが何度も再発する
- 妊娠・出産後から痛みが続く
当院での仙腸関節障害の治療

当院では、以下を組み合わせて患者さま一人ひとりの症状に合わせた治療を行います。
- 整形外科専門医による身体所見・鑑別診断
- レントゲンやMRIを必要に応じて実施
- 仙腸関節ブロック注射による痛みの軽減
- 理学療法士による姿勢改善・運動療法
- 骨盤ベルトの適切な使用方法の指導
腰痛がなかなか良くならない場合、仙腸関節が原因である可能性は少なくありません。ぜひ一度ご相談ください。