- 腱板に石灰がたまる「石灰沈着性腱板炎」とは
- 石灰沈着性腱板炎の症状
- 石灰沈着性腱板炎になりやすい人・原因
- 石灰沈着性腱板炎の検査・診断
- 石灰沈着性腱板炎の治療法と再発予防
- 石灰沈着性腱板炎でやってはいけないこと
腱板に石灰がたまる「石灰沈着性腱板炎」とは
石灰沈着性腱板炎とは、肩の腱板にカルシウムが沈着して炎症を起こす病気です。腱板とは、肩関節を安定させる「棘上筋」「棘下筋」「肩甲下筋」「小円筋」という4つの筋肉の腱の総称です。この部分に石灰(リン酸カルシウム)がたまると、炎症や激しい痛みが生じます。
発症のメカニズムは完全には解明されていませんが、腱の血流低下や加齢による変性、ホルモンバランスの変化などが関係していると考えられています。特に40〜50代の女性に多く、夜間に突然激痛が起こるのが典型的な症状です。五十肩(肩関節周囲炎)と間違われることも多く、正確な診断には整形外科での画像検査(レントゲン・超音波)が重要です。
石灰沈着性腱板炎の症状
石灰沈着性腱板炎では、ある日突然、強い肩の痛みが出るのが特徴です。
特に夜中に痛みが強まり、眠れないほどの痛みを訴える方も少なくありません。痛みのため腕を上げられなくなり、着替えや洗髪などの動作も困難になります。
また、炎症が強い場合には肩の腫れ・熱感・圧痛を伴い、触れるだけでも痛むことがあります。痛みが落ち着いても、石灰が残っていると可動域が制限され、肩が上がらない、回しづらいと可動域制限が残ることもあります。
石灰沈着性腱板炎になりやすい人・原因
発症の明確な原因は不明ですが、以下のような要因が関与していると考えられています。
- 腱板の血流障害による代謝異常
- 加齢による腱組織の変性
- 肩を酷使する仕事やスポーツ
- ホルモンバランスの変化(特に女性)
- 糖尿病や甲状腺疾患などの基礎疾患
石灰が沈着してもすぐに痛みが出るとは限らず、しばらく経ってから炎症が起こり、急に激痛が出るケースも多く見られます。石灰は“形成期・休止期・吸収期”の経過をたどり、特に吸収期に炎症・激痛が出やすいとされています。
石灰沈着性腱板炎の検査・診断
診察では、まず発症の経緯や痛みの性質を丁寧に伺い、肩の可動域や圧痛部位を確認します。
そのうえで、レントゲン検査や超音波検査(エコー)によって腱板内に沈着した石灰を確認します。
石灰が白く映ることで、五十肩など他の肩疾患と区別がつきやすくなります。
必要に応じてMRI検査を行い、腱板断裂などの合併がないかを確認します。これにより、より適切な治療方針を立てることができます。
石灰沈着性腱板炎の治療法と再発予防
石灰沈着性腱板炎の治療は、痛みのコントロールと石灰の除去を目的として行います。
保存療法(まずは負担の少ない治療から)
- 消炎鎮痛薬(内服・外用)
- ステロイド+局所麻酔薬の注射
- エコーガイド下穿刺吸引(注射針で石灰を除去)
- 三角巾や装具による安静
- 温熱療法・リハビリ
多くの方はこのような保存療法で症状が改善します。特にエコーガイド下で石灰を吸引する治療は、痛みの軽減効果が高く、治療当日から肩を動かせることもあります。
体外衝撃波(集束型)
体外衝撃波(集束型)は、腱板内やその周囲に沈着した石灰や炎症部位に、衝撃波を一点に集中的に照射する治療法です。
集束型の衝撃波を用いることで、肩関節深部にある石灰沈着部や炎症部位にピンポイントで作用し、石灰の吸収促進や血流改善、痛みの軽減が期待できます。エコーガイド下穿刺吸引が困難な場合や、保存療法を行っても痛みが長引くケースにおいて、手術を検討する前の治療選択肢として行われることがあります。皮膚を切らない低侵襲な治療で、身体への負担が少ないのも特徴です。
手術療法(難治性・再発性の場合)
石灰が硬くなって吸引できない場合や、再発を繰り返す場合には、鏡視下腱板内石灰摘出術(関節鏡手術)を検討します。肩関節鏡を用いて小さな穴から石灰を除去するため、傷跡も小さく、回復も早いのが特徴です。
治療期間とリハビリ
急性期の痛みが強い時期は、数日〜1週間程度で軽快することもありますが、石灰が大きい場合や炎症が強い場合は、1〜3カ月程度のリハビリが必要になることもあります。
痛みが落ち着いた後は、肩の可動域訓練・ストレッチ・姿勢改善を行い、再発を防ぎます。
石灰沈着性腱板炎でやってはいけないこと
痛みのある時期は、以下の行為を避けてください。
- 痛みを我慢して肩を無理に動かす
- 痛む部位への強いマッサージ・鍼治療
- 重い荷物を痛む側で持つ
- 痛む肩を下にして寝る
- 自己判断で温めすぎる(急性期は悪化の恐れ)
正しい診断と治療を受けることで、ほとんどの方は後遺症なく回復します。整形外科専門医の診察を早めに受けることが大切です。